この記事は2019年8年1日に掲載された情報となります。
真夏日や猛暑日だけ熱中症に気を付ければいいと思っていませんか?実際は、気温がそれほど高くない日にも、熱中症は発生しています。どのような時に注意が必要なのか、労働環境の整備を担当する北海道労働局で教えてもらいました。
北海道労働局 労働基準部 健康課
主任労働衛生専門官 尾張 裕一さん(左)
労働基準監督官 一色 実さん(右)
職場で熱中症になる人が急増!
「昨年、職場で熱中症になり4日以上休業した人は全国で1,178人。そのうち28人が亡くなりました。疾病者、死亡者ともに一昨年と比較して2倍以上に増加しています」
こう説明してくれたのは、北海道労働局の尾張 裕一さん。業種では建設業、製造業、運送業が多いそうですが、農業でも過去5年間に88人が熱中症で仕事を4日以上休み、うち6人は死亡という最悪の事態となりました。
熱中症の発生が多いのは、7月・8月、時間帯では11時台および14〜16時台です。また、日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化して、病院へ搬送されるケースも少なくありません。
「道内では昨年、気温21℃の日に熱中症が発生しました。畑の草取りのような屋外作業だけではなく、牛舎の中、ハウスでの収穫中、選果場での作業中に発生した事例もあります」
炎天下ではないから大丈夫と、油断するのは大敵です。
暑さ指数を活用しよう
気温があてにならないとなると、何を目安にすればいいのでしょう。労働基準監督官の一色 実さんは「暑さ指数(WBGT指数)」を参考にしてほしいと言います。
「暑さ指数は、気温だけではなく湿度や輻射(ふくしゃ)熱なども合わせて割り出した数値で、その労働環境において作業者が受ける熱ストレスを測る指標です(図1・表1)。例えば気温が低くても湿度が高いと、汗をうまく放散できないため、つらく感じますが、そうした環境は熱中症のリスクを高めています」
建設業では具体的な作業ごとに暑さ指数の基準値が定められ、どのレベルの作業が可能な環境かを判断する目安になっています(表1)。
ただし、この基準値は服装などによっても変わるそう。農薬の散布時や草刈り時、マスクや防護服を着用している場合は、熱中症のリスクはより高くなるので、いつも以上に注意が必要です。
「暑さ指数というと難しく感じると思いますが、何より重要なのは、熱中症は命に関わることだという危険性を認識してもらいたい」と言う一色さん。畑でもハウスでも「なるべく単独作業を避け、家族や従業員同士で気を付け合ってほしい」と呼びかけています。
熱中症にならない環境づくりのヒント
●畑やハウスでの単独作業は控える。
●身体を冷やすための冷たい水やおしぼりを用意。
●水分および塩分補給できるようにスポーツドリンクなどを用意。
●休憩時間を長めに設定。
●直射日光を遮る休憩場所を用意(アウトドア用のタープでも可)。
●熱を吸収する黒っぽい服は避け、通気性・透湿性の良い素材を着用。
●「キリのいいところまで」と思うと無理をしてしまいがち。時間を決めて休憩を。
●トイレのない畑では水分摂取を控えてしまいがち。仮設トイレの設置も必要。
●環境に慣れていないパートや技能実習生などの体調に配慮。
●ギリギリの作業は負荷がかかるので、余裕をもったスケジュールを。