この記事は2019年2月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
●リン酸肥料の働きを知り、圃場や目的に合わせた適正な施肥に努めましょう。
リン酸の役割
リン酸は肥料の3要素(窒素・リン酸・カリ)の一つで、重要な生理作用に関わる核酸や酵素を構成し、エネルギー伝達、光合成、呼吸、糖代謝などに深く関わります。
作物がリン酸を吸収すると、根の生育が良くなり発芽や初期生育を促進します。また、開花・結実を良くして成熟を早め品質が向上します。
リン酸が不足すると、葉の赤紫色化や果実の成熟遅れなど、生育・収量・品質が低下します。
土壌中のリン酸
①「リン酸固定」が起こります
肥料から溶け出たリン酸の大部分は、土壌中でアルミニウムなどの金属イオンと強く結び付き、作物が利用しにくくなる「リン酸固定」が起こります(図1)。
特に火山性土は反応しやすいアルミニウムを多く含むため、リン酸固定の起きやすさを示す「リン酸吸収係数」が高く、リン酸が効きにくい土壌です。
アルミニウムは、土壌pHが低いほど多く土壌中に溶け出るので、炭カルなどでpHを適切に保つことが重要です。
また、たい肥には腐植酸などリン酸固定を抑える物質が含まれるので、たい肥施用はリン酸の有効利用という面でも意義があります。
②リン酸の適正施肥が重要です
北海道では、寒冷地での初期生育確保やリン酸不足圃場での土づくりのため、リン酸質肥料が大量に施用されてきました。その結果、現在では北海道施肥ガイドのリン酸基準値を超える圃場が多くなっています(図2)。
リン酸は過剰害が出にくいと言われてきましたが、リン酸過剰で収量や品質が低下する事例も報告されています。北海道施肥ガイドや地域の指導に基づき、土壌分析結果やたい肥施用を踏まえたリン酸減肥に取り組みましょう。
また、様々な作物で収量を落とさずリン酸施肥量を削減できる技術の普及が進んでおり(図3)、ホクレンではこれらに対応した肥料銘柄も取り扱っています。
余分なリン酸を施肥しないことは、肥料コスト低減にも役立ちます。
リン酸質肥料の特長を踏まえた活用を
化学肥料のリン酸成分は「水溶性リン酸」「可溶性リン酸」「く溶性リン酸」に分けられます(図4、表1)。水溶性リン酸は作物に最も早く吸収されますが、土壌中にリン酸固定されやすい性質があります。く溶性リン酸は根から出る弱い酸に溶けて作物に吸収されるので作物への吸収は遅いですが、土壌中に固定されにくい性質があります。可溶性リン酸は水溶性とく溶性の中間の肥効です(図4)。
栽培期間の短い作物やリン酸固定力の小さい土壌では水溶性リン酸、栽培期間の長い作物や長期的な土づくり目的ではく溶性リン酸など、目的に合わせリン酸質肥料を使い分けましょう。なお、一般的な化成肥料やBB肥料は、く溶性リン酸または可溶性リン酸と、水溶性リン酸の両方を含みます。