防除

ねぎの簡易軟白栽培における黒腐菌核病の防除対策

キーワード:ねぎ黒腐菌核病
地上部の症状
写真1.地上部の症状(生育停滞し、葉先から枯れ込む)

 

この記事は2018年2月1日に掲載された情報となります。

 

道総研 上川農業試験場 生産環境グループ
主査 新村 昭憲さん

Profile:平成2年帯広畜産大学卒業。製薬メーカー、種苗管理センター勤務の後、平成6年から道南農業試験場、中央農業試験場を経て平成24年から上川農業試験場勤務。各種作物の病害を担当。

 

POINT!
❶黒腐菌核病は低温(15℃以下)で活発に、高温(18℃以上)でおとなしくなります。
❷防除薬剤はペンチオピラド水和剤F(20%)の定植後潅注処理が効果的です。

 

黒腐菌核病とはどんな病気か

ネギの他、タマネギ、ユリ、ニンニク、ラッキョウ、ニラなどに感染し、本州以南では冬作のネギで発生、大きな被害を及ぼしている病害です。

北海道では近年ネギで発生が認められていますが、平成5年頃には十勝地方のユリで被害が認められたこともあります。土壌伝染する病害ですが低温を好み、春早くから栽培が始まるハウス軟白ネギで被害が認められています。症状は土に触れている部分(根や葉鞘)が腐敗し、生育は停滞、葉先から枯れ込みます(写真1)

やがて表面には黒色球状の菌核が多数生じるため、黒腐菌核病と呼ばれます(写真2)

 

黒腐菌核病の症状
写真2.黒腐菌核病の症状(長浜原図)

 

低温が発病を助長

ハウス簡易軟白ネギの栽培では春作は3月(一部は2月)頃から定植が始まりますが、本病の被害は4月定植作型までで、5月以降の定植では被害はほとんど認められていません。その理由は、温度によって発病程度が大きく変わるからです。

図1に示すように発病は地温が低いほど激しくなり、18℃〜20℃以上では明らかに症状が軽くなります。

 

地温と発病の関係
図1.地温と発病の関係

 

このことから、防除対策として地温を上昇させることが重要となります。それには地温を上げる効果が高いマルチ資材を選ぶことが有効です。

図2は4月7日に定植したネギで、白黒ダブルマルチ(白面を上あるいは下)とグリーンマルチを比較したときの結果ですが、地温が上がるグリーンマルチを利用することで発病が低減、生育量も増加することがわかります。

 

マルチ資材による発病と収量への影響
図2.マルチ資材による発病と収量への影響
(4月の平均地温:グリーン18.3℃、黒上17.8℃、白上14.5℃)

 

黒腐菌核病発生地では、地温の低い4月上旬定植までの作型ではグリーンマルチ等の地温上昇効果の高いマルチの利用をおすすめします。

 

防除薬剤

黒腐菌核病は土壌病害であるため、発生地では土壌消毒を実施する場合が多いのですが、本病は土壌消毒の効果が得られにくい病害です。一方、近年、本病に優れた効果を示す潅注剤が利用できるようになりました。これらの薬剤を比較した結果が図3です。

 

黒腐菌核病に対する潅注処理および各種土壌消毒の効果
図3.黒腐菌核病に対する潅注処理および各種土壌消毒の効果

 

ペンチオピラド水和剤F(商品名:アフェットフロアブル)の効果が極めて高いことがわかります。本剤の処理法は土壌潅注となるため、定植後にマルチの植え穴に向けて潅注を行います。定植直後から15日目までは高い効果が得られ、定植直後と30日後の2回潅注でより高い効果があります。

以上の対策をまとめると、黒腐菌核病の発生圃では低温期(春期では4月以前)に定植をできるだけ避ける。

 

避けられない場合は
①グリーンマルチなど地温を上昇させる効果の高いマルチ資材を利用する。
②定植直後〜定植15日目までにペンチオピラド水和剤F(20%)の1L/㎡株元潅注を行う(定植直後+30日後の2回処理でより効果が高い)。
③これらの対策でも十分な効果が得られない場合は栽培後に土壌消毒で最も効果の高かったダゾメット(商品名:バスアミド)60‌kg/10aによる土壌消毒を併用します。