この記事は2018年2月1日に掲載された情報となります。
今回の米政策の見直しについて、生産者の皆さんはどのように捉えているのでしょう。厚真町で稲作に取り組む掘田さんに経営環境の変化に対する心構えや対策について聞きました。
北海道農協青年部協議会
副会長 堀田 昌意 さん(JAとまこまい広域)
Profile:1982年、厚真町生まれ。平成14年に就農したときは7haだった営農規模を31haまで拡大。水田14haと原木椎茸を2本柱に、小麦、大豆、カボチャ、サツマイモ、アスパラ、ハスカップを栽培しています。父親と妻、子ども3人の6人家族。
答え「みんなで決めて、みんなで取り組むことがやっぱり大事なんだと思います」
Q.政策はどう思いますか?
A.16年前、僕が就農したときは7haでしたが、離農する方の農地を借りて面積を増やし、今は31haになりました。うち14haで米を作っています。
本来なら借地に使用料を払うより買いたいのですが、引退したおじいちゃん・おばあちゃんにも生活がある。厚真町は3〜4haで水田をやってた小さな農家が多いので「うちで作るよ」と言うと、安心してくれるんですよね。
そういう状況なので、今回の政策の変更はもちろん不安です。今年からなくなる主食用米への支援の7,500円/10aの穴をどう埋めるのか。一方で借金の返済は変わらず続くわけじゃないですか。心配じゃない農家はいないと思います。
Q.何か独自の対策を考えていますか?
A.対策といっても、農業経営は十人十色で、これをやれば大丈夫というような方法はないでしょう。家で野菜をつくって消費を減らすとか機械の更新時期を延ばすとか、それぞれ自衛策を考えているはずです。
僕は去年の春にトラクターと田植機にGPSを導入しました。厚真町とJAが協力してRTKのアンテナを立ててくれたのがきっかけです。自動操舵は運転が不要なので旋回だけは操作しますが、一人で田植えが可能です。かなりの省力化につながりました。
また、去年から「大地の星」という品種で乾田直播の試験栽培も始めました。積算温度が若干足りなくて完熟までもっていけなかったのですが、まずまずの収量でしたよ。
新しいことに挑戦するときに頼りになるのがSNSです。農業士会や青年部、厚真町の農業委員会の仲間とフェイスブックでつながっているので、困ったときは「どうしたらいいべ」と写真を載せると、すぐにコメントやメッセージが返ってくるんです。
Q.今後、どのようにしようとお考えですか?
A.道青協で行っている「道産農畜産物求評研修会」で東京や大阪、名古屋などに出かけ、卸売業者や量販店で北海道米の評価を聞いてきましたが、どこへ行っても「取り扱いを増やしたい」「もっと作ってくれ」と言われます。北海道米の需要が高まっているのは間違いありません。
問題は単価ですよね。僕らは機械を更新できなくなったら終わりですから、再生産が可能な価格を維持してほしい。そのためには需給のバランスを維持することが重要。みんなで決めて、みんなで取り組むことがやっぱり大事なんだと思います。
その上で一人ひとりの努力も必要です。僕らのJAでは、70歳を越えた先輩が稲わらを出し始めたんですよ。白老牛のエサに売れば少しは足しになるって。そういうふうに新しいことを始めて頑張っている姿を見たら、勇気付けられます。
堆肥をもらってきて撒いたり、除草剤をやめて畦の草を自分で刈ったり、工夫できることはまだまだある。経営者として時代に即した農業のスタイルを模索していくのも大切だと思うんです。
堀田農場の取り組み
●GPSの導入
トラクターと田植機にGPSのガイダンス装置・自動操舵装置を導入。水田だけではなく、麦・大豆・カボチャの畑でも活用して労働負担を軽減。
●乾田直播の試行
直播用の播種機を購入。去年から60aで乾田直播栽培を試験栽培。10a当たり590kgの収穫を確保。育苗と田植え作業の軽減化を図ります。
●米に依存しない
原木椎茸と米、2本柱の経営でリスクをカバー。米づくりだけにこだわらず、戦略作物助成や畑作の経営所得安定対策の制度も視野に入れます。
●SNSで情報交換
地域の仲間だけではなく、全道の生産者とSNSでつながり、こまめに情報交換。ちなみに堀田さんのfacebookの友達は400人以上。