この記事は2017年10月1日に掲載された情報となります。
新たに農業を始める人は毎年どのくらい、いるのでしょう。農家後継者ではない人が新規に参入するには、どのような方法があるのでしょう。公益財団法人北海道農業公社が運営する「北海道農業担い手育成センター」で聞きました。
公益財団法人 北海道農業公社
北海道農業担い手育成センター
担い手支援部 就農相談課
課長 森 幸二さん
公益財団法人 北海道農業公社
担い手本部長 加藤 和彦さん
新規就農者は毎年600人前後
農業人口の減少、高齢化が進む現状を北海道農業公社担い手本部長の加藤和彦さんに聞きました。
「北海道の販売農家数は平成7年で7万4千戸、28年では37千戸。約20年で半減しており、65歳以上の比率も約4割に迫っています」
10人に4人が高齢者という現状だけでなく、驚くのは全戸の7割に後継者がいないこと。農業を継続するには新規就農希望者を積極的に担い手として育成していく必要があります。
では、新規就農者はどのくらいいるのでしょう。「北海道は近年600人前後で推移しています。うち農家出身の後継者は新規学卒者が3割強、Uターンが5割弱。残りの約2割が農家外からの新規就農になっています(図1)」と加藤さん。
国の就農給付金の制度や、市町村の研修施設の充実などで、新規就農者は徐々に増えています。
しかし、近年は都道府県間や市町村間で就農希望者の獲得競争が厳しくなってきています。「府県では農地を手放す人が少ないので、これまでは農地が手に入りやすい北海道を希望する人が多かったのですが、最近は首都圏近郊で土地を借りて就農する人が増えています」と加藤さん。
また、自営ではなく農業法人への就職をする人も増え、通年雇用の可能な府県に比べると、冬の雇用が不安定になる北海道は敬遠される可能性もあります。
担い手育成のための多彩な支援
課題が山積するなか、担い手育成センターは北海道やJAグループ、市町村などと連携して、新規就農者の確保と育成のための幅広い取り組みを行っています。電話やインターネットで常時、就農相談を受け付けているほか、東京や大阪、札幌で開催される「新・農業人フェア」など就農相談会への参加、農業系の大学や高校での就農ガイダンス、農業体験先や研修先の紹介から、就農後の生活支援まで、ワンストップで一貫した支援を提供しています。
さらに、後継者のいない生産者で経営移譲を希望する方に就農希望者を紹介する経営継承事業、独身の後継者に出会いの場を提供する婚活イベントの開催、女性農業後継者の交流を促す研修会なども実施しています。
「農業女子ネットワーク『はらぺ娘』が生まれたのも、研修会がきっかけ。彼女たちに聞くと、親の姿を見て自分も農業をやりたいと感じたという人が多いですよ。親がいきいきと農業に取り組んでいることが後継者づくりのポイントの一つだと思います」
そう話すのは就農相談課の森幸二さん。親が楽しそうに農業に取り組むことが農業をつなぐ上で大切なのかもしれません。