この記事は2017年8月1日に掲載された情報となります。
去年、台風が北海道に三つも上陸したのは、観測史上初めてのこと。「異常気象」という言葉も頻繁に使われるようになりましたが、実際のところはどうなのでしょう。今年3月に調査報告書『北海道の気候変化第2版』を公表した札幌管区気象台を訪ねました。
札幌管区気象台
気象防災部 地球環境・海洋課
地球温暖化情報官 服部 博和さん
札幌管区気象台
気象防災部 地球環境・海洋課
予報官 中山 寛さん
地球温暖化は本当なのか?
地球温暖化といいますが、実際に気温は上がっているのでしょうか。気象台の服部博和さんは「北海道7地点(札幌・旭川・帯広・網走・根室・函館・寿都)の平均気温は100年あたり1.59℃の割合で上昇している※1」と言います。これは都市化の影響が含まれるものの、世界や日本全体の気温上昇傾向から、やはり地球温暖化が主な要因と考えられるそうです。
※ 1:統計期間 1898年〜2015年
では、今後はどうなるのでしょう? 服部さんは、気象庁が2013年に発表した『地球温暖化予測情報第8巻』の気候モデル予測実験の結果を北海道に当てはめて解析した予測と前置きした上で「20世紀末と21世紀末の気温をくらべると、北海道では年平均気温が3℃程度上昇する予測」と紹介。これまでの100年間では1.5℃の上昇なので、倍のスピードで温暖化が進む可能性があります。
北海道の気候はこう変わる!
予測によると、北海道の真夏日(最高気温30℃以上)は年間で10日程度増加。札幌の真夏日は平年値では8日なので、単純計算すると18日に増える予測です。反対に、真冬日(最高気温0℃未満)は40日程度減少。札幌の平年値は45日なので、冬はしのぎやすくなるかもしれません。
これだけ聞くと大きな影響を感じられないかもしれませんが、問題は雨。大雨(日降水量100ミリ以上)の1地点あたりの発生回数は約2倍、激しい雨(1時間降水量30ミリ以上)も約3倍の頻度になる予測です。
「気温が上がると大気中に多くの水蒸気を含むようになる。なかなか降り始めないけれど、いったん凝結して雨粒になるとドンと降る。たとえると『ししおどし』の竹筒が太くなった状態だと考えてください」と服部さん。
●なぜ激しい雨が増えるの?
一方、雪は内陸の一部を除いて最深積雪は20センチ程度減少、年間の降雪量も50センチ程度減少するとの予測です。
【これからの気候予測】
出典/札幌管区気象台「北海道の気候変化(第2版)」
●気温
+3℃(年平均気温の上昇北海道では全国平均を上回る3℃程度の上昇を予想)
●降水(「北海道の気候変化(第2版)」は中程度の温室効果ガス排出が続くことを想定したシナリオで予測)
約2倍に増加する傾向(北海道各地の大雨〈日降水量100mm 以上〉の1 地点あたりにおける発生回数)
約3倍に増加する傾向(激しい雨〈1 時間降水量30mm以上〉の年間発生回数)
●降雪(「北海道の気候変化(第2版)」は中程度の温室効果ガス排出が続くことを想定したシナリオで予測)
北海道の最深積雪が約20cm減少(最深積雪については全体的に減少すると予想されるが、内陸の一部地域は増加。※2)
北海道の降雪量が約50cm減少(降雪量は全体的に減少すると予測される。内陸の一部では増加することも。※3)
※2:厳冬期に寒冷な地域では、降雪量が増加すること等から最深積雪も増加する予測。
※3:厳冬期に寒冷な一部地域では、地球温暖化による気温の上昇等を背景とした大気中の水蒸気量の増加により降雪量が増加する予測。
急な気象の変化に備えるには?
今後の北海道の気候変化に対して私たちはどう備えればいいのでしょうか。同気象台予報官の中山寛さんは「異常天候早期警戒情報を活用してほしい」と言います。
異常天候早期警戒情報は、2週間先までに著しい高温・低温などが予測された場合、気象庁のホームページで原則、月・木曜日※4に発表するもの。また、異常天候早期警戒情報の基礎資料となる「気温の確率予測資料」も公表。
※4:月曜が祝日の場合は、翌火曜日に更新します。
2週間先までの7日平均気温などの予測データを公表し、CSV形式でダウンロードもできるので、こうした情報を活用すれば、天候の変化に対して準備が可能になるでしょう。