この記事は2023年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン農業総合研究所
ホクレン長沼研究農場では、20haほどの試験圃場と温室やパイプハウスなどの施設を活用し、道内に適する品種の開発や生産現場の課題解決に向けたさまざまな試験を行っています。
今回は、「さつまいも」と「小麦」に関する取り組みをご紹介します。また、当農場視察のおすすめ時期もお伝えします。
❶さつまいもの品種開発など
新たにさつまいもの品種開発に着手
さつまいもは、北海道における新規作物として注目されており、作付けが拡大しています。北海道産は府県産と比較し、粘質でしっとり甘くなる点が評価される一方、道内では生育期間が短いため一般的に収量が低い傾向にあります。
そこで、道内で栽培した場合でも収量性に優れる品種の開発に、今年度から着手しました。開発は長期にわたる見込みですが、担当の三上職員と小林職員は「北海道に適したおいしい品種を開発し、道産さつまいもの生産振興を図りたい」と意欲的に取り組んでいます。
採苗に係る試験も実施
さつまいも栽培において、道内での育苗は燃料代等のコストが掛かるため、より効率的な採苗技術が求められます。そのため、塊根の伏せ込み時期や手法、苗床における栽植密度などの検討を進めています※。
※品種開発先と許諾契約を締結したうえで取り進めています。
農業総合研究所全体で総合力を発揮する
また、札幌の研究所(食品流通研究課)では、品質や貯蔵に関する調査も行っています。今後、道内のさつまいもの生産量が増えた際、おいしさを保ちながら、より長期に貯蔵できる方法も必要になると考えられます。
このように、さつまいもに関して、ホクレン農業総合研究所では、「品種」「栽培」「品質・貯蔵」と、生産現場から消費・流通に至る一連の研究を通して、さつまいもの生産振興につなげていきます。
❷小麦の品種開発
「春よ恋」の次の品種を目指して
「春よ恋」はパン用春播き小麦として、2000年に優良品種となり、製パン適性が優れることなどについて評価を受けています。2022年は全道で約1万2700ha作付けされ、春播き小麦の主要品種となっています。
一方で、倒伏しやすく環境によっては穂発芽(収穫前に発芽し品質劣化)の被害が発生するなど、栽培上の課題があるため、それらを改善した多収で倒れにくく穂発芽耐性に優れる品種の開発に取り組んでいます。
品種化までの長い道のり
長沼研究農場では、毎年、新規交配で生み出される約7000の試験系統を栽培し、有望な系統は収量性や、製パン適性の評価なども行います。
こうして選ばれた1〜2系統は、更に全道で収量性などの試験を行い、「春よ恋」との置き換えの可能性について検討しています。品種開発は長い年月がかかる地道な作業ですが、担当する竹之内課長補佐と井田職員は「生産性が優れ、春播き小麦の安定生産に寄与できる品種を1日でも早く、生産者の皆さんにお届けできるよう進めたい」と話します。
❸ 2023年試験の見ごろ(おすすめ時期)
長沼研究農場におけるさまざまな試験
長沼研究農場では、このほかに、「かぼちゃ」「ブロッコリー」「スターチス・シヌアータ」などの品種開発を行っています。特に収穫作業の省力化が図れる品種や、食味が良い品種の開発に力を入れています。
また、みどりの食料システム戦略やSDGsなどを視野に、環境負荷を抑えた持続可能な農業が求められる中、生産コスト減を目指した施肥試験やスマート農業技術を活用した技術の実証などにも取り組んでいます(写真8)。
視察の適期が分かる2023年試験見ごろカレンダー
これらさまざまな試験を実施している長沼研究農場では、生産者やJAの皆さんに、実際に試験の状況を見て、営農の参考にしてもらうため視察を受け入れています。
作物ごとの見ごろ(おすすめ時期)を示したカレンダー(図2)をご活用いただき、ぜひ当農場にお越しいただければ幸いです。