夏は有機野菜の栽培、冬は干し芋や切り干し大根の製造で、スタッフ18人を通年雇用している新篠津村の大塚ファーム。障がい者の受け入れにも積極的です。たくさんの人に働く場を提供している大塚さんの思いをお聞きしました。
この記事は2023年6月1日に掲載された情報となります。
有限会社大塚ファーム
代表取締役社長 大塚 裕樹さん
(JA新しのつ 組合員)
「ビジョンを語って従業員に『ここなら伸びる』と思ってもらいたい」
大塚 悠生さん
通年雇用のために干し芋を製造
新篠津村で有機農業を実践している大塚ファーム。かつては人を雇っても夏場だけの季節雇用でした。
「なんとか通年で雇用できないかと着目したのが干し芋づくりです」
大塚さんは農業体験に来る子どもたちに芋掘りをさせてあげたいと、さつまいもの栽培を始めましたが、化学肥料や農薬を使わなくても想像以上にうまくできたこと、妻の早苗さんがおやつに干し芋をつくってみたらおいしかったことから、本場・茨城に勉強に行き、2010年から自社工場で干し芋の製造を始めました。
北海道産で、しかもオーガニックの干し芋は珍しいため注目を集め、今では紅はるかやシルクスイートなど全7種類8万パックを出荷しています。
「さつまいもは規格外品を干し芋に加工して無駄なくお金にできるのがいい」と大塚さん。その後も切り干し大根やトマトジュースなどオリジナル製品を増やしてきました。
多い日はスタッフ30人が作業
現在、通年雇用のスタッフは18人。うち正社員が4人、外国人技能実習生が4人、残り10人がパートです。このほかに障がい者就労支援事業所と連携し、障がい者の施設外就労として12人を受け入れ、パックのシール貼り、切り干し大根の袋詰め、ポットの土詰めなどを担当してもらっています。
「1人雇用して300万円の人件費がかかるとすると、売り上げが600万円ないと見合わないという人がいるんだけど、僕は違うと思う。確実に330万円を稼げたら十分。10人雇えば300万円の利益になるんですから」
多い日は30人のスタッフが働く大塚ファーム。工場や寮や作業場など数カ所に男女別の水洗トイレ(写真1)を整備し、休憩室にはエアコンを完備するなど、働きやすい環境整備に力を注いできました。
夢を語ることも経営者の仕事
パートは出勤退勤を自分で決めるフレックスタイム制。給料は1分単位の計算で、しかも時給は毎年アップ。規格外の有機野菜ももらって帰れるとあって、長く続けてくれる人が多いそうです。
「最近はお手伝いをしながら旅する『おてつたび』というサイトを通じて、大学生が来てくれるようになりました。リフレッシュ休暇やボランティア休暇を設ける企業も増えています。これから人口が減っていく中、ICTの活用はもちろん、朝だけ働く人、夜に働く人、土日に働く人などを組み合わせて運営していく必要がありそうです」
そのためには「時給2,000円くらい払えるくらい力をつけたい」と大塚さん。「付加価値を高めて利益を上げ、従業員にしっかり給料を払っていかないと、農業は衰退してしまう」と危惧します。
そんな大塚さんと長男の悠生さんが、いま目標にしているのは有機農業の学校をつくること。ハウス団地を用意して、有機農業をやりたい人にリスクなく挑戦してもらい、将来は独立できるようにしたいと夢見ています。
「こんな農業をやりたい。だからみんなに協力してほしいとビジョンを語って、ここなら来年も再来年も伸びると従業員に思ってもらえるようにならないと」
大塚さんの挑戦はまだまだ続きます。