この記事は2017年4月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 畜産生産部 自給飼料課
POINT!
春播きで休閑緑肥や前作緑肥を栽培する際のポイント!
春は、秋播き小麦や夏~秋野菜の前作、また、有機物補給や有害センチュウ抑制を目的に緑肥を播種する時期です。緑肥の特性と留意点をまとめました。
1.緑肥の後作への効果
5種類の緑肥を5月に播種して7~8月に鋤き込み後、後作の小麦と翌々年のてん菜収量に及ぼす効果をみると(表1)、緑肥の乾物収量(=土壌に鋤き込む量)は、とうもろこし、ひまわりで多くなっています。土壌への有機物の還元、物理性改善や団粒構造の形成を図るには、とうもろこしなどの長大作物が有効です。
緑肥の後作への増収効果は、緑肥の収量と分解のしやすさによって決まります。C/N 比※が低く、分解しやすいアカクローバの場合は、土壌中への窒素放出が速やかに進行し、後作の小麦で増収しますが、それ以外のC/N 比が高い緑肥では、翌々年のてん菜で収量増が認められます。また、鋤き込み後のキタネグサレセンチュウ密度をみると、えん麦野生種でのみ発生抑制効果が認められました(図1)。
※C/N比:植物などに含まれる炭素(C)と窒素(N)の比率。(低いと分解が早い傾向)
また、とうもろこしやアカクローバの休閑利用により、下層土の膨軟化、土壌の透水性・砕土性の向上といった土壌改善効果が期待できます。
2.各種緑肥の注意点
①緑肥作物と主作物の組み合わせ
アカクローバは秋播き小麦の前作に適します。表2に挙げた春播きで利用可能な緑肥の中では、えん麦野生種のみがキタネグサレセンチュウを抑制します。そのため、夏ダイコンなど根菜類の前作としては、えん麦野生種が推奨されます。景観美化には花を楽しめるひまわり、シロカラシ、ハゼリソウをご利用ください。
なお、近くにアブラナ科の野菜がある場合は、シロカラシは避けます。また、ひまわり「春りん蔵」はバーティシリウム半身萎凋病に強い品種ですが、発生圃場への作付けは避けてください。
②鋤き込み時期
緑肥作物の野良生え・雑草化を避けるため、種子を落とす前に鋤き込みます。特にひまわり、シロカラシなどを景観緑肥として花を楽しむ場合、過度に鋤き込み時期を遅らせることは避け、開花後1~2週間以内を目安とします。
えん麦野生種は、出穂~開花以降の鋤き込みとなると、分解しにくくなりますので、50~60日の栽培で穂ばらみ~出穂始めでの鋤き込みが基本となります。
アカクローバの休閑利用は、野良生えの発生を防ぐため、土壌表面に露出しないよう完全にすき込みます。なお、アカクローバなどC/N 比の低い緑肥を鋤き込むと、有機物を分解する土壌中の菌が急激に増殖し、後作物の出芽に悪影響を与える恐れがありますので、後作物の播種は、緑肥の分解が落ち着くまで少なくとも3週間は確保します。
花を楽しむ緑肥作物
③後作物の施肥量調整
緑肥を鋤き込むと、窒素とカリの減肥を期待できます。緑肥鋤き込み後の窒素減肥可能量は、緑肥の乾物収量とC/N 比で決まります。
なお、休閑利用でC/N 比が高くなる緑肥を栽培した場合は、翌年の窒素飢餓の発生を避けるために、緑肥鋤き込み時に石灰窒素などの施用や後作物での増肥が必要となります。カリ減肥可能量については、土壌診断を行って確認してください。