この記事は2017年4月1日に掲載された情報となります。
からだに装着することで、労働負荷を軽減すると期待されているアシストスーツ。実際のところ、効果や使い心地はどうなのでしょう?農業総合研究所(農総研)の職員が検証してみました。
※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません。
ホクレン農業総合研究所 営農支援センター
営農技術課 木谷 祐也さん
「アシストスーツは腰が守られているという安心感がある。外すと不安になるほどです」
手軽なアシストスーツとは?
生産者の高齢化や現場の労働力不足が叫ばれるなか、注目を集めているアイテムがアシストスーツです。一口にアシストスーツといっても、電動で重量物を持ち上げるタイプもあれば、ゴムの伸縮力で腰にかかる負担を軽減するタイプまで、さまざまな種類があります。
モーターで駆動する電動タイプは、少ない力で荷物を持ち上げられるものの、装置が大がかりで高額なのが難点。
一方、気軽に試せるのがゴムやFRP(繊維強化プラスチック)を使ったアシストスーツ。スーツを着けたからといって、自分の力以上を出せるわけではありませんが、中腰の動作の際に、腰への負担が軽減されます。
中腰の作業に威力を発揮!
既に複数のメーカーから販売されていますが、実際の使い心地はどうなのでしょう?今回ホクレン農総研の木谷祐也職員が3種類を実際に身につけて比較してみました。
アシストスーツを装着して20キロの培土の袋を持ち上げてみましたが「3種類とも、前屈みになると背中からぐいと引っ張られる感じがあって、確かに腰に安定感がある」と高評価。「腰を屈める作業や中腰のまま行う作業に使える」と感じたそうです。
ただし、いずれも着けたままの車の運転や、しゃがみ込む動作は困難。中腰の作業のときに絞って活用するのが良いでしょう。
アシストスーツは体力が低下した高齢者向けで、若いうちは必要ないと思いがちですが、健康で長く働くために若いうちから使うのが理想的です。
ホクレンではアシストスーツの普及に向け、米穀部門を中心に昨年から講習会での紹介やサンプル貸出などを始めており、各支所資材関係課や営農支援室と連携して取り組んでいます。
今回ご紹介した3種類のアシストスーツは、生産者の皆さんに試着してもらえるよう、各支所および訓子府実証農場、長沼研究農場にサンプルを用意しています。サイズも各種揃えていますので、商品のご購入も含めて、お近くのJAにお問い合わせください。
●ラクニエ(株式会社モリタホールディングス)
特殊なゴムの伸縮力で、中腰の動作をサポート。
前屈みの作業で背中をまるめると、背面のゴムが伸び、元に戻ろうとする力が働くので、腰の負担が軽減されます。
「重いものが軽く感じるわけではないんですが、腰に負荷がかからないので作業が楽になると思う」と木谷職員。コンパクトで持ち運びしやすいサイズも特徴で、作業着の中に着用することもできそう。「ゴムとベルトでできているので、どこに首や足を通すのか分かりづらく、最初は装着に手こずるかもしれませんが、慣れると簡単に身につけられると思う」とのこと。
●タスカル(ぎょれん)
棒状のアシスト材が背中にフィット。腰を守ります。
棒状のアシスト材2本が背骨に沿うようにフィットします。背中を曲げると、このアシスト材の復元力が上半身を持ち上げる方向に作用するため、腰に負担がかかりません。「肩から背負って、太ももにパットを巻き付ける。形状が分かりやすくて装着しやすいのが特徴です」と木谷職員。
ベスト、アシスト材、でん部のパットと、3つのパーツに分かれているので、体にあったサイズを調整しやすいのも利点。すでに漁業では昆布干し作業に活用されているそうです。
●サポートジャケットBb+PRO(ユーピーアール株式会社)
ウエストと膝の上下をホールド。腰の負担を減らします。
背面にFRP(繊維強化プラスチック)のサポート材がついていて、サポート材の復元力とゴムの伸縮力の両方を利用しています。「膝の上下をベルトで固定するので、安定感がある」と木谷職員。ただし「幅広の腹部バンドでサポート感があるものの、その分、多少蒸れやすいかもしれません」とコメント。
装着の仕方も分かりやすく、ウエストがしまってスタイルが良く見えるので、女性にもおすすめ。昨年秋に販売をスタートしたばかりの新商品です。
中腰の姿勢はもう不要、苗を引っかけて運べます
株式会社ホクエツ 「ナエキャッチ」
水稲の苗を持ち上げて運搬する間、何度も腰を曲げたり伸ばしたり、腰や膝がしんどいことはありませんか?そんなとき役に立つのが、この「ナエキャッチ」。バーの先端で苗箱をひっかけ、引き出したり、引き上げたり、さまざまな使い方ができます。
伸縮式なので、長さの調節も自在。苗ポット用もあります。お問い合わせはお近くのJAまで。