この記事は2016年8月1日に掲載された情報となります。
昨年、北海道農政部の委託により、農業・農村労働力確保対策事業で実態調査に取り組んだ一般社団法人北海道地域農業研究所の専任研究員に、リサーチ結果の概要を教えてもらいました。
一般社団法人
北海道地域農業研究所研究部
經亀(きょうかめ) 諭 専任研究員
農業雇用への就業意思
昨年秋、道内在住の求職者約1,000人を対象に、インターネットでアンケート調査を行いました。
農業に対しては「体力が必要な仕事」「汚れる作業がある」「定期的な休みがない」「拘束時間が長い」など、負のイメージを持つ人も少なくありませんでしたが、農業で働く意志を尋ねる設問では27.4%、およそ4人に1人が条件次第では農業雇用への就業意志があると答えました。
希望の雇用形態別でみると、正規雇用希望者の28%、パートタイム希望者の24.7%が、条件次第では農業雇用への就業意志があると答えています。
このうち農業法人などへの正規雇用を求める主な層は、30歳代の男性ならびに大学生であり、彼らは就職先に対して、休日、諸手当、定期昇給を含む安定的な収入などを求めています。
一方、パートなど非正規雇用を求めているのは女性と高齢男性で、こちらは定期的な休みと1日の拘束時間の短さ、通勤の容易さ、力作業や汚れる作業でないことなどを求めています。
つまり、求職者が求めるこうした条件を整え、負のイメージを払拭できれば、労働力の確保につながる、といえるでしょう。
受け入れの環境が鍵になる
就職活動中の学生が企業に定期昇給、定期的な休み、社会保険、労災などの就業条件を求めるのと同様、求職者は農業にも労働条件や雇用環境の充実を望んでいます。
パートの希望者は子育てと両立できるよう、3〜4時間の短時間勤務や、臨機応変に休みがとれる体制づくりを求めています。働き手がいないとなげく前に、まず求職者の目線で働く現場を見直してみる姿勢が必要なのかもしれません。
農業は「社会に貢献できる」「やりがいがある」「生きものとふれあえる」「いろんな年齢性別の人が共に働ける」など、良いイメージも持たれています。学生の中には農業にICT活用による将来性やベンチャー的な魅力を感じている人もいます。
こうした点をアピールすれば、潜在的な労働力を掘り起こすことが可能なのではないでしょうか。