米どころとして知られる空知では、水稲も組み込んだ輪作が行われています。水稲・麦・大豆・なたね・飼料用とうもろこし・てん菜の4年で6品目の輪作を実践している新田農場にお邪魔しました。
この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。
岩見沢市 新田 慎太郎さん
Profile:家族に除草を手伝ってもらうことはあるものの、39haの面積をほぼ一人で管理。「稲のメリットを最大限利用して回すことが空知型輪作体系の極意」と話します。
田畑輪換からスタート
水田からの転作で最初に小麦、しばらくして大豆を導入した新田慎太郎さん。初めは水田と畑の場所を固定化していました。
「連作で毎年のように病気が出るようになりました。今年の小麦はいい出来かもと期待していると、気付いたら、立枯病が蔓延したり。これはどうにかしないといけないと、田畑輪換を考え始めました」
当時は新田さんが畑、父親が水田と作業分担していたそうです。
「畑の土は団粒構造にするために湿った状態では耕さないけど、水田に戻す時は水を入れて土を練る。矛盾してると思って、乾いた状態で整地して代かきせずに水を入れて田植えをしてみたら、根張りが良くてすごくとれたんです。そうして無代かき水田と畑を回すようになると病気が出にくくなりました」
無代かきの移植栽培のほか乾田直播にもチャレンジ。収量を安定させ、今は稲を全て直播で栽培するようになっています。
輪作の品目を徐々に増やして
当初は水稲と麦と大豆の3品目でしたが、十勝の4年輪作をお手本に新たな4品目の作物を探し、なたね、飼料用とうもろこし、直播てん菜を加えて今は4年で6品目の輪作を実践しています。
「イネ科やマメ科じゃないものを入れたかったので、アブラナ科のなたねを加えました。飼料用とうもろこしは子実を飼料として販売し、茎葉は圃場に還元しています。直播てん菜は地上ではなく地中に収穫物ができるものがほしいと思って加えてみたところ、収量もすごく良いですよ」
工夫しているのは、作付けの順番。なたねの後は必ず稲にしているそうです。
「なたねの種は小さいので、収穫時にこぼれてしまう。なので次は水田にして野良生えを防ぎます。また、てん菜の後に大豆を播くのはてん菜の茎葉部を肥やしにしたいから。全てに理由があるんです」
輪作のためにできることを考える
新たに空知型輪作に取り組む際のポイントを伺いました。
「畑を水田にする時は、水を張れるかどうかや均平に気を付ける。逆に畑に戻す時は、排水対策が大事。基盤整備されてない圃場でも、収穫後に暗きょを入れるなど自分でも取り組めることがあるしね。機械は共同利用すれば大きな投資は不要だし、そもそも手持ちの機械でできる品目や栽培法を探す手もあります」
地域全体でレベルアップを
そしてもう一つ、新田さんが重視しているのは、作物ごとの経営分析です。
「この地域の農業者みんなで一緒にやってるんですけど、作物ごとの所得を比べると、なたねが一番所得になる稼ぎ頭だと分かり、毎年品目構成を見直すうえでも参考になる。また、地域の中で個人の収量レベルや、かけているコストが一目で分かることから、競争意識が生まれ情報交換も積極的に行われています」
そんな新田さんに畑づくりの思いを尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「良い土をつくって、作物の力を最大限引き出したい。例えば、小麦なら10aで1000㎏とる人もいるけど、地区平均は500㎏。この差を埋めたいですね」
そのためにも輪作は欠かせません。