ポイント
❶小麦の安定生産は適量播種と適切な窒素追肥が鍵
❷【新技術】「きたほなみ」の窒素施肥管理の指標が道央圏にも拡大
❸豆類の安定生産の基本は土づくり
❹てん菜は適切な防除と圃場の排水対策が重要
❺【新技術】馬鈴しょを植えない防除畦を設けることで作業効率アップ
❻馬鈴しょは土壌物理性の改善のほか基本技術の励行を
この記事は2023年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局
技術普及課 総括普及指導員
片山 正寿さん
麦類
ポイント❶
小麦の安定生産は適量播種と適切な窒素追肥が鍵
昨年は登熟期間中の日照が少なく子実が充実不足となり、製品歩留まりや外観品質が低下した地域がありました。基幹品種「きたほなみ」は穂数が多くなりやすく、一穂当たり粒数も多い特性があります。このため穂数過多になると1㎡当たり粒数が多くなり、充実不足になりがちです。越冬前の過繁茂(茎数過多)は穂数過多や倒伏のリスクを高めるので、各地区の播種適期内において適量播種を行い、起生期以降は適切な窒素追肥で茎数・穂数を管理しましょう。
ポイント❷【新技術】
「きたほなみ」の窒素施肥管理の指標が道央圏にも拡大
気象要因による収量・品質の変動が大きい秋播き小麦「きたほなみ」。十勝やオホーツク地域では2020年に「気象変動に対応した窒素施肥管理」の体系が示されましたが、新たに道央圏においても安定生産に向けた生育指標が設定されました。起生期茎数1000 本/㎡以上の場合は起生期を無追肥とし、幼穂形成期に追肥するなど、目標穂数を達成するための指標がまとめられています(表1、2)。
受光効率を高め 秋まき小麦を安定して穫る(資料)
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/research/chuo/shingijutsu/new_agritechnology05_wheat.pdf
豆類
ポイント❸
豆類の安定生産の基本は土づくり
昨年は少雨による土壌の乾燥で出芽率の低下や出芽の不揃いが見られたほか、秋口の連続した降雨による生育の停滞や病害虫の発生で影響を受けた地域がありました。
近年、目立っているのはダイズシストセンチュウや茎疫病・落葉病など、土壌伝染性の病害虫発生です。被害を未然に防ぐためには、輪作体系の確立により作付け間隔を維持することが重要。緑肥や堆肥など有機物の投入、サブソイラ等による心土破砕(写真2)や適度な土壌水分での砕土など、土壌の排水性・保水性の確保に努めましょう。病害虫発生が懸念される圃場では、地域や実需にあった抵抗性品種の導入も検討しましょう。
てん菜
ポイント❹
てん菜は適切な防除と圃場の排水対策が重要
昨年は例年になく強風の日が多く、4月下旬には一部地域で風害が発生しました。土砂の飛散を助長するような過度な砕土は避け、防風ネットの設置、同伴緑肥(イネ科)の導入などで風害リスクを回避しましょう。
褐斑病(写真3)や根腐病、黒根病の影響を受け収量が平年を下回る地域もありました。褐斑病は作付品種の抵抗性を考慮した適切な薬剤防除がポイント。根腐病、黒根病は排水不良条件で発生が助長されるので、圃場の排水対策が重要です。資材高騰への対策には土壌診断の実施による適正施肥が求められます。
馬鈴しょ
ポイント❺【新技術】
馬鈴しょを植えない防除畦を設けることで作業効率アップ
馬鈴しょの防除畦を改良し、種いもを植えない条を2本設け、その直上を防除機やトラクターのタイヤが通るようにすると、土塊が減り、収穫畦数も減るため、収穫に要する作業時間が約10%短縮できます(図1)。畦数の減少に伴い種いもの使用量が減る一方で、おおむね同等の収量が見込めます。植え付け時に防除畦を決め、プランタのクラッチ切り替えによる、種いもの供給停止や、シャッター目盛りでの施肥量調整などで、収穫作業が楽になります(写真4、5)。
土塊を減らし種いもの使用量を減量するバレイショ防除畦の改良(資料)
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kenkyuseika/panf/r5/25.pdf
図、写真提供:農研機構 北海道農業研究センター
ポイント❻
馬鈴しょは土壌物理性の改善のほか基本技術の励行を
昨年は4〜5月の少雨により土壌が乾燥し、地域によっては萌芽のばらつきが見られました。全道の規格内収量は平年並みですが、長玉や腐敗、緑化などで収量が低下した地域もありました。
トラクターの走行で形成される堅密な耕盤層は、余剰水分の下方浸透を妨げますので、広幅型心土破砕機等による土壌物理性の改善が欠かせません(写真6)。雨水の浸透性が向上すれば、地表流の発生が抑えられ土壌浸食が軽減します。有機物の投入、土壌診断による適正施肥、輪作など、基本技術の励行が安定生産につながります。